新型コロナウイルス感染症治療薬(国内承認状況と非承認薬の有効性・安全性)

感染症

2021年10月現在、コロナウイルスワクチン接種率は1回接種は人口の70%以上、2回摂取は60%を超えました。感染者数も顕著に減少しております

しかしながら、まだ感染の機会がなくなったとはいえず、充分注意が必要です

こんにちは、薬剤師 坂本です

本日は新型コロナウイルス治療薬に関してです

記事を読んでわかること

  • コロナウイルス感染症治療薬の現状
  • 重症度別の治療方法・治療薬
  • 自費診療の有効性・安全性など(イベルメクチンについて)

では始めさせていただきます

◆日本国内承認のある新型コロナウイルス感染症治療薬 5種

ソトロビマブ(ゼビュディ点滴静注液)2021年9月27日特例承認

ウイルスのスパイクタンパクに作用する中和抗体です。抗体カクテルと効き方は同じですが変異を起こしにくい部分に作用します。つまり今後に出現の可能性のある変異型のコロナウイルスにも効果が期待できます

SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに投与すること。症状発現から1週間程度までを目安に投与することが望ましいです

軽症〜中等症Ⅰの患者様で重症化リスクが高い人が対象です

厚労省が買い上げ、配分対象医療機関へ無償譲渡

抗体カクテル療法(ロナプリープ注射液)2021年7月特例承認

カシリマブとイムデビマスの2種類の抗体を混ぜ合わせて点滴投与。ウイルス表面のスパイクタンパク質に結合し、ウイルスが細胞内に入るのを防ぎます

軽症患者に使用できます

発症早期に開始が必要です

臨床試験では入院や死亡リスクを70%減らすことが確認されています

感染者全ての重症度の方が対象です

厚労省が買い上げ、配分対象医療機関へ無償譲渡

バリシチ二ブ錠4mg(オルミエント錠)2021年4月承認

関節リウマチ治療薬 サイトカインによる刺激を伝えるJAK(ヤヌスキナーゼ)を阻害し、免疫異常の炎症を抑えます。

”酸素投与が必要な中等度以上の患者様でレムデシビルとの併用”が使用条件です

レムデシビルと併用で最長14日使用可能です

単独レムデシビルより平均1日早く回復のデータがあります

重症・中等症Ⅱ・中等症Ⅰの方が対象です

デキサメタゾン(錠剤・注射剤)2020年7月承認

(ランクの強めのステロイド)関節リウマチ、重症の肺炎などの治療。強い抗炎症作用・抗アレルギー作用

レムデシビルとの併用にて致死率が大きく下がりました

重症〜中等症Ⅱの方が対象

経口・経管・静注

レムデシビル(べクルリー点滴静注用)(注射)2020年5月特例承認

エボラ出血熱の治療薬 ウイルスのRNA(遺伝子情報)を作る酵素プロテアーゼを阻害し、増殖を抑える

人工呼吸器・人工心肺装置(ECMO)をつけている患者に限定投与

現在は中等症の患者にも投与

重症・中等症Ⅱ・中等症Ⅰの方が投与対象

未承認薬

以上のように、新型コロナウイルス感染症の治療はウイルス自体の増殖をいかに抑えるか、また症状の要因として起こるサイトカインストームを減少させるための免疫を抑える治療が行われます

効果・有害事象の検証により、まだ承認されていない以下の薬も一部内科医師にて使用または研究がされています

新型インフルエンザ治療薬(ファビピラビル)内服

ウイルスが細胞分裂し、増殖する過程を抑える抗ウイルス薬です

ウイルスのRNAポリメラーゼ(遺伝子情報を取り込む酵素)を阻害(酵素がウイルスを作る核酸の代わりにファビピラビルを取り込む)してウイルスが細胞内で増えるのを抑えます

元はインフルエンザ感染症の治療目的で開発されていた薬です。

劇的な効果を示す高い有効性がまだ確認されていないことや妊娠・胎児への副作用が懸念されていることなどでまだ国内では薬事承認されていません。

関節リウマチ治療薬(トシリズマブ)注射

インターロイキン6(IL -6)というサイトカインの働きを強く抑える関節リウマチの治療薬です

中外製薬が開発した国産の薬です

コロナ感染症ではサイトカインストームを抑え、肺炎の重症化を防ぐ目的で使用されます。

喘息吸入薬(シクレソニド)吸入

ステロイド吸入薬 気管支喘息の治療に使用されます

承認されているデキサメタゾンと同じような作用をしますが、新型コロナ感染症治療への有効性が明らかになっておらず、また、肺炎症状への有効性のデータの不足により承認はされていません。

急性膵炎の治療薬(ナファモスタット)

急性膵炎の治療薬として日本で開発された薬です。未承認ですが、日本にて膵炎に長年処方されていて、安全や長期使用などのデータも多く存在し効果の研究がされています

コロナウイルス外側の膜と感染される細胞の膜が融合する、ウイルス侵入過程を抑えたデータがあります

疥癬虫治療(イベルメクチン)内服

※個人(輸入など)でも入手可能

寄生虫(疥癬)の治療薬として承認されていて北里大学の研究所などで中等症の患者様を対象に有効性・安全性を調べています

一部の先生(医師)などから新型ウイルスの患者にも有効な可能性がある情報が出されています

保険適応の用法・用量

  • 腸管糞線虫症 通常イベルメクチンとして体重1kgあたり200μgを2週間間隔で2回経口投与
  • 疥癬 通常イベルメクチンとして体重1kgあたり200μgを1回経口投与

効果の発現の仕方 副作用等

疥癬虫など無脊椎動物の神経・筋細胞に作用し、寄生虫が麻痺を起こすという独特な効き方です

重大な副作用として中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群・肝機能障害、黄疸・血小板減少症などが報告されており、高齢者や妊婦さんへの安全性は確立していないとされています

WHO、製造メーカーなどでは臨床試験での有効性はないとされており、有効性を感じておられる先生方も快方に向かう中での投与なのか、わからないが改善の実感、実績が感じられれば使用する、というような実状かと思います

などが臨床研究されています

まとめ

現在では未承認薬は医師の判断に応じ使用されますが治療方針を患者様と相談し、自費の診療により処方となります

承認薬は公費適応(国がご負担)となり新型コロナ感染患者様には自己負担なしとなります

専門家の意見なしで一般の方が服用するのはとても危険です

イベルメクチンは、疥癬虫感染症の服用方法で良いのか、連日服用が果たして安全なのか、確実と思える方法は日本のデータでは実証されてりいません

ネットだけ調査して、自己判断で予防服用などすることはせず、内科等の主治医のご意見をよく聞きましょう

なにより、まだ今後しばらくは感染拡大を抑える努力意識を継続していくこと、そして感染しないことが最も重要です

最後までお読みいただき、ありがとうございました

新型コロナ重症度分類(2021年8月現在新方針とソトロビマブ追記)

分類臨床状態治療
重症集中治療室あるいは人工呼吸器・ECMOなどの
機械サポートが必要
レムデシビル、デキサメタゾン、バリシチニブ、抗体カクテル療法
中等症Ⅱ酸素投与が必要 SpO2 93%以下レムデシビル、デキサメタゾン、バリシチニブ、抗体カクテル療法
中等症Ⅰ息切れ 肺炎初見あり SpO2 94〜96%自宅療養 抗体カクテル療法 ソトロビマブ
軽症咳のみ 息切れなし自宅療養 抗体カクテル療法 ソトロビマブ

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