こんにちは 薬剤師 サカモトです
新規承認されたコロナウイルス治療薬「モルヌピラビル」と「トシリズマブ」についてお話します
すでに承認済の治療薬はこちらhttps://ai-pharmacist.com/covid19-therapeutic/
本記事にてわかること
- モルヌピラビル(ラゲブリオ)の効果 トシリズマブ(アクテムラ)の効果
- 使用対象患者様
- 副作用
- 有効性
モルヌピラビル(製品名:ラゲブリオカプセル200mg)
効果効能 SARS-Cov-2による感染症
2021年12月24日特例承認
用法用量 発症後5日以内に飲み始める
通常、18歳以上の患者には、
モルヌピラビルとして1回800mg(4カプセル)を1日2回、5日間投与する
抗インフルエンザ薬や帯状疱疹の治療などのように早期に治療開始の必要はあり、6日目を過ぎて飲み始めた患者様への有効性のあるデータは得られていないとのことです
モルピラビルの効き方
飲み薬として服用した後、体の中で活性代謝物(薬の効果を発揮できる構造)になります
活性代謝物はRNA依存性RNAポリメラーゼという酵素を阻害し、ウイルスのRNAが作られ増えるのを防ぎます
薬の活性本体が上記酵素により取り込まれ、ウイルスRNAの複製エラーが起こりウイルスの増殖が阻害されます
効き方はすでに承認となっているレムデシビル(製品名ベクルリー)と同じです
服用対象患者様
新型コロナウイルス感染症の患者様で重症化リスク因子を有し、医師が必要と判断した方に対して処方されます
陽性で5日以内なので必ず投与されるというわけではありません
18歳以上で酸素投与を必要としない軽症・中等症Ⅰ の方
重症化リスク因子を有する方
重症化リスク因子:61歳以上・活動性の癌・慢性腎臓病・慢性閉塞性肺疾患・肥満(BMI30以上)・重篤な心疾患・糖尿病の方など
妊娠している方は服用できません
授乳中の方は有益性が危険性を上回る場合に使用します
報告されている副作用と欠点
- 下痢 3.1%
- 悪心 2.3%
- 浮動性めまい 1.3%
- 頭痛 1.0%
- 嘔吐、発疹、蕁麻疹 1%未満
- 中毒性皮疹 頻度不明
カプセルで大きさが0号 かなり飲みみにくい大きさかもしれません
また重症度の高い当感染症患者様に対する有効性は確立していません
食事の影響
モルヌピラビルは食事と関係なく投与(服用)可能です
高脂肪食摂取後投与で活性本体のCmax(濃度が最高になる時間)は35%減少したがAUC(体内に入った薬物全体の量)は同程度でした
かかる費用・流通
薬価未収載品で保険調剤等での自己負担額は設定されておらず、新型コロナウイルス陽性患者様の薬剤の自己負担は無しです
有効性・安全性等評価(臨床試験)
18歳以上の新型コロナウイルス感染症患者を対象にMOVe-OUT試験という調査でモルヌピラビルはプラセボ群に比較して入院・死亡の割合を有意に減少させる結果が報告されています
無作為化29日目までにおいて入院・死亡の割合は
モルヌピラビル 9.7%
プラセボ 6.8%
で約30%低下したとしています(11月発表)
10月発表の中間解析では
モルヌピラビルでは7.3%
プラセボでは 14.1%
と、その差6.8%
で、入院・死亡のリスクがおよそ50%低下のデータでした
抗リウマチ薬 トシリズマブ(商品名アクテムラ)
効果効能に追記(1月21日承認)
SARS-CoV2による肺炎(ただし、酸素投与を要する患者に限る)
人化抗ヒトILー6(読み方インターロイキン)の作用を抑制し免疫抑制効果を示す分子標的治療薬です
症状の原因の炎症を起こす物質IL−6が働く場所(受容体という)に結合し
IL−6が結合できないようにしてその働きを抑えます
承認前までは関節リウマチ・サイトカイン放出症候群の治療などに使用され、
コロナウイルス感染症状の寛解への研究が進められてきました
「酸素投与を必要とする患者」で副腎皮質ステロイド剤と併用で投与されます
免疫を強く抑えるのでコロナ感染症以外の感染症を合併している患者様へは特別注意が必要です
FDA(米食品医薬品局)では昨年6月にトシリズマブの緊急使用を許可していました
副作用とその代表的な症状
感染症
敗血症
風邪の症状 : 発熱、息苦しさ、喉の痛み、咳・痰・鼻水など
敗血症は感染が全身に広がり悪寒・血圧低下なども起こります
蜂巣炎
皮膚と皮膚直下の組織に生じる細菌感染症
間質性肺炎
息切れ・空咳(痰のない咳)発熱
肺胞という袋の壁や周辺に炎症が起こり血液中に酸素が取り込みにくくなる症状
血球減少(無顆粒球症・白血球減少・好中球減少・血小板減少)
感染症にかかりやすくなります
あざや歯茎出血、皮下出血をおこしやすくなったり、月経時の出血が止まりにくく増えたりします
アレルギー反応
アクテムラ使用時〜24時間以内に下記症状出る方がいます
息苦しさ、めまい、目の前が暗くなる、心臓がドキドキする、かゆみ、
顔や体が赤くなり熱くなる、寒気、吐き気、嘔吐など
薬が体質にあわないため起こる反応
ワクチン摂取時も注射後15〜30分待機しますね 同じです
注射部位反応
注射部位に発疹、腫れ、かゆみ、出血など
以上副作用・アレルギー項目は発生したら主治医、看護師、薬剤師に要相談です
早急な診断が必要な重篤な副作用
腸管穿孔(腸に穴が開く):激しい腹痛・吐き気_嘔吐・寒気・ふらつき・意識低下等
心不全 :息苦しい・息切れ・疲れ・むくみ・体重増加
肝機能障害 :だるさ・発熱・吐き気・嘔吐・食欲不振・白目や皮膚が黄色・尿が褐色など
まとめ
処方医師・調剤する薬局は申請許可が必要です
陽性患者様全ての方が服用(使用)できるわけではありません
頻回にわたり変異を繰り返し、収束が阻止されている新型コロナウイルスは変異・薬剤耐性の発生や試験されていない薬物相互作用や副作用の調査、またウイルス変異が今後も起こるとするとADE(抗体依存性感染増強)などの可能性も出てきます
変異・耐性がすこしでも発生しないよう注意深く処方し、使用していくことが不可欠です
インフルエンザやMRSAなどのように薬の多用で薬剤耐性化されてきたウイルス(細菌)もあり新規抗ウイルス剤も頻用に限度があります
既存の抗体カクテル療法等と比較しながら、その各患者様にあった選択・病床数の確保と、医師医療者達は日々逼迫です
オミクロン株は死亡例重症者少ないかもしれませんが、少ない重症者に万が一なったらそれはその方にとっては100%です
2019年の1度目の緊急事態宣言時を思い出し、初心に戻って感染対策しましょう
最後までお読みいただき、ありがとうございました サカモト
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