パキロビッドパックが2月10日薬食審・医薬品第2部会で特例承認 同日厚労省特例承認
2月27日まで役2000の医療機関(院内処方)と一部薬局が使用可能です
28日以降全国入院外来で使用可能となります
https://www.mhlw.go.jp/content/000896601.pdf
記事を読んでわかること
- パキラビッドパックの効果(ラゲブリオと比較)
- 投与対象患者様と注意すべきこと
- 副作用
- 併用禁忌医薬品38品目・食品1品目
- 重症化リスク因子
パキロビッドパック 一般名:ニルマトレルビル/リトナビル
効果 効能(モルヌピラビル同じです)
SARS-Cov-2による感染症
作用機序(薬効)
3CLプロテアーゼ(ウイルスを複製するためにタンパクを切って作る酵素)を阻害する
含有のリトナビルは本剤が体内で簡単に分解(代謝)されないよう助ける役割をします
モルヌピラビルはRNAポリメラーゼを阻害
投与対象者
重症化リスク因子を有する軽症~中等症Ⅰの患者(モルヌピラビルと同じ)
臨床試験では酸素飽和度92%未満の患者様は除外されています
12歳以上かつ体重40kg以上の小児、成人が服用可能
(モルヌピラビルは重症化リスク因子がある18歳以上)
用法用量
1日2回 5日継続服用
錠剤3錠「ニルマトレルビル2錠・リトナビル1錠」
服用回数はモルヌピラビル(1回に4カプセル)と同じ・錠剤で大きさ小さめ
症状発現から5日以内に服用開始
6日目以降に開始した患者様における有効性を裏付けるデータは得られていない
(モルヌピラビルと同様、多くの抗ウイルス薬は発症早期の服用開始が望まれます)
入院・死亡リスク
88%減少(モルヌピラビルは約30%)
腎臓の働きが落ちている方、ご高齢の患者様はニルマトレビルを1錠減らす必要があります
併用禁忌(禁止)薬
リトナビル(抗HIV薬):製品名ノービア、カレトラ等の併用禁忌薬
リトナビルの代謝酵素への影響を加味して、パキロビッド投与終了後少なくとも3~5日程度空けて再開を検討することが推奨されています
該当薬剤:
- 鎮痛薬:アンピロキシカム(フルカム)、ピロキシカム(バキソ、フェルデン)
- 片頭痛治療薬:エレトリプタン(レルパックス)、ジヒドロエルゴタミン
- 降圧薬:オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン(レザルタス配合錠)、アゼルニジピン(カルブロック)
- 抗不整脈薬:アミオダロン(アンカロン)、ベプリジル(ベプリコール)、フレカイニド(タンボコール)、プロパフェノン(プロノン)、キニジン
- 抗凝固薬:リバーロキサバン(イグザレルト)
- 抗結核薬:リファブチン(ミコブティン)、リファンピシン(リファジン)
- 抗精神病薬:ブロナンセリン(ロナセン)、ルラシドン(ラツーダ)、ピモジド
- 頭痛治療薬:エルゴタミン・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン(クリアミン)
- 子宮収縮薬:エルゴメトリン、メチルエルゴメトリン(パルタン)
- 肺高血圧症治療薬:シルデナフィル(レバチオ)、タダラフィル(アドシルカ)、リオシグアト(アデムパス)
- 勃起不全改善薬:バルデナフィル(レビトラ)
- 高脂血症治療薬:ロミタピド(ジャクスタピッド)
- 抗悪性腫瘍薬:ベネトクラクス〈再発または難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の用量漸増期〉(ベネクレクスタ)、アパルタミド(アーリーダ)
- 抗不安薬/抗てんかん薬:ジアゼパム(セルシン、ホリゾン)
- 抗不安薬/催眠鎮静薬:クロラゼプ酸二カリウム(メンドン)、エスタゾラム(ユーロジン)、フルラゼパム(ダルメート)、トリアゾラム(ハルシオン)
- 麻酔薬/抗てんかん薬:ミダゾラム(ドルミカム、ミダフレッサ)
- 抗てんかん薬:カルバマゼピン(テグレトール)、フェノバルビタール(フェノバール)、フェニトイン(ヒダントール、アレビアチン)、ホスフェニトイン(ホストイン)
- 抗真菌薬:ボリコナゾール(ブイフェンド)
- セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品※ハーブティーやサプリメントなどに含まれていることあり
- コルヒチン投与中で腎機能・肝機能障害がある患者様も禁忌
重症化リスク因子(参考)
※60歳以上
※BMI 25kg/m2超
※喫煙者(過去30日以内の喫煙があり、かつ生涯に100本以上の喫煙がある)
※免疫抑制疾患又は免疫抑制剤の継続投与
※慢性肺疾患(喘息は、処方薬の連日投与を要する場合のみ)
※高血圧の診断を受けている
※心血管系疾患(心筋梗塞、脳卒中、一過性脳虚血発作、心不全、ニトログリセリンが処方された狭心症、 冠動脈バイパス術、経皮的冠動脈形成術、頚動脈 内膜剥離術又は大動脈バイパス術の既往を有する)
※1型又は2型糖尿病
※慢性腎臓病
※鎌状赤血球症
※神経発達障害(脳性麻痺、ダウン症候群等)又は医学的複雑性を付与するその他の疾患(遺伝性疾患、メタボリックシンドローム、重度の先天異常等)
※限局性皮膚がんを除く活動性のがん
※医療技術への依存(SARS-CoV-2による感染症と無関係な持続陽圧呼吸療法等)
臨床試験にて報告された副作用
・味覚不全 ・めまい ・高血圧 ・下痢 ・悪心 ・嘔吐・消化不良 ・胃食道逆流性疾患 ・肝機能検査値異常 ・発疹・筋肉痛
特に注意したい重大な副作用
肝機能障害
疲れやすい、体がだるい、力が入らない、吐き気、食欲不振
中毒性表皮壊死融解症 (Toxic Epidermal Necrolysis:TEN) ちゅうどくせいひょうひえしゆうかいしょう(テン)
皮膚が広い範囲で赤くなり、破れやすい水ぶくれが多発、発熱、粘膜のただれ
皮膚粘膜眼症候群 (Stevens-Johnson 症候群) ひふねんまくがんしょうこうぐん(ス ティーブンス・ジョンソンしょうこうぐ ん)
発熱、目の充血やただれ、唇や口内のただれ、円形 の斑の辺縁部にむくみによる環状の隆起を伴った ものが多発する
まとめ
現時点で承認されている経口(内用薬)コロナ治療薬は特例承認されたもののみで有効性・安全性・品質情報情報は限られています
有害作用・併用注意薬、服用患者様背景(既往疾患など)等引き続き現場やメーカーにより情報収集されます
当薬剤使用の治療には医師・看護師・薬剤師により患者様のコロナウイルス感染以外の背景(持病・併用薬・腎臓や肝臓の機能・性別、妊娠授乳の有無など)を入念に精査する必要があります
万が一のとき治療薬剤の選択肢が少しでも広がるよう、持病・既往がある方は常にお薬手帳など携帯しましょう
スマートホンアプリでも良いと思います
どんな軽症で済むことが多いウイルスでも、リスク因子を持つ方、高齢の方にとっては軽視すべきものではありません
3回目のワクチンが普及し、抗ウイルス薬のデータや供給が安定し重症化を防げる患者様が増えることを心より願っております
今回もご拝読ありがとうございました 薬剤師 サカモト
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